60年代のロックの隆盛にともない、クラシックはレコード業界からは袖にされてきたようです。しかし、パヴァロッティやドミンゴが出てきてスターダムに上がるにつれ、状況が変わったようです。
とくにパヴァロッティはブレスリンという敏腕マネージャーのはたらきもあって、オぺラのスターからポップスターになったと言われています。これは、オぺラファンからはよく思われていないようですが、しかしブレスリンのPR戦術のおかげと、聴衆を強烈に引き付ける歌の魅力で、パヴァロッティは人気者となり、驚異的な成功を収めていきます。
また、パヴァロッティの代名詞のようになっている「誰も寝てはならない」は、1990年代にマドンナやエルトン・ジョンを抜いてチャートのトップに躍り出て、イギリスではアルバムがボン・ジョビを抜いてトップになったそうです。この1曲で、ロックの大ヒット並みの旋風をおこしたと言われています。
1970年代の前半からソロコンサートをカーネギーホールで成功させ、1990年代には野外コンサートを行います。それに合わせるようにクラシックのレコード業界も80年代後半から動き出し、90年代には巨大産業になったそうです。ここにきて、クラシックを取り巻く状況が、大きく変わったのでしょうね。
映画やCMにオペラが使われ、人々に浸透していきます。クラシックやそれ風なものを、人々は教養がありそうに見えるというので買い始めます。とくにお金もあり力もある消費者グループに対しては、上流階級の仲間入りを果たしましたので、音楽はクラシックをどうぞというメッセージを発信していきます。そのようにして出現した新たな消費者層により、巨大マーケットが生まれたそうです。
3大テノールの大成功によって、ほかのクラシックの音楽家たちも金になるからと、業界の吸収合併の嵐も生んだそうです。そして3大テノールの公演は、1回ごとにケーブルテレビに売られ、ビデオ化され、何億ドルもの利益を生んだのでした。
そういう中で、ドミンゴの先見性は素晴らしいと言えます。ドミンゴはすでに10数年前からその状況を予見していて、ケーブルテレビの天下になると言っていたそうです。そしてビデオディスクが普及するようになると、革命的になるとも言っていたそうです。
劇場では、最前列で見られてもわからないけど、カメラでクローズアップされる場合に備えて、それに耐えられるかを考えていたそうです。ドミンゴはオぺラにも歌唱力以上のものが求められる時代だから、姿形もよければよいほどビデオも見てくれるようになると思ったそうです。そこで容姿を保つようにしようと決心したそうです。それは見事な予見でした。その通りになりましたからね。
そして3大テノールは、クラシック業界や娯楽産業界だけでなく、何の関係もない企業も呼び込みました。メトロボリタン歌劇場の番組は、昔から長年のスボンサーがいたそうですが、それ以外の歌劇場の公演にも、いろいろな業界から参入があったそうです。
華やかなオペラから大きな利益が得られ、芸術を支援することで企業のイメージも良くなり、公共にも貢献できるというのがその理由だそうです。
もうひとつドミンゴのすばらしいところは、クラシック界の大スターを超えてポップカルチャーの大スターになっても、変わらずクラシック芸術に挑み続けてきたことでしょう。さらに歌劇場の芸術監督として、また若い歌手の発掘にも熱心で、どこまでもクラシック業界へ貢献してきましたからね。そこは深見東州さんの音楽活動にも言えるのかなと思いますけどね。
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