今年の5月15日から17日に開催された、G4Dツアー今季2戦目の「G4Dオープン」において、ISPS HANDAアンバサダーのブレンダン・ローラー選手が優勝したので、遅ればせながら紹介します。
G4Dツアーは2022年からDPワールドツアーが、EDGA(欧州障がい者ゴルフ協会)の協力を受けてはじめた障がい者ゴルフツアーになります。それ以前は、2019年からEDGAとヨーロピアンツアー(現DPワールドツアー)が協力してはじめた、EDGAヨーロピアンツアーという障がい者のためのツアーがありました。
どのように違うのかというと、EDGAヨーロピアンツアーはEDGA(欧州障がい者ゴルフ協会)が主体となっていました。その後コロナが大流行し、中断せざる得ない時期がありました。
そして2022年からは、DPワールドツアーが主導し、ボランティアがメインのEDGA(欧州障がい者ゴルフ協会)を、プロフェッショナルな組織にするためのサポートを始めました。運営資金やメディア対応、選手が出場するのに必要な経費の支援なども含まれます。
そして従来のツアーは構成が一新され、DPワールドツアーが管轄する「G4Dツアー(Golf for the Disabled Tour)」へと名前も変えて進化していきました。
具体的には、メディアへの露出が増え、社会により認知されるようになります。また、試合数も5試合ほどから7試合以上に増えています。DPワールドツアーの試合と同じ会場、同じ週に開催されています。
DPワールドツアーとしては、「6人に1人が障害を抱えている」という時代の中で、世の中へ啓発する意義があり、また、障がい者がスポーツに参加するきっかけ作りにもなっています。

プロゴルフツアー運営のプロですから、「WR4GD(World Ranking for Golfers with Disability)」を活用し、公平に選手の出場を選考しています。そして競技環境のプロ化とツアーの拡充が進み、最近はネットのフォーマット(グロスからHANDICAPを引いた数字)の試合を導入したりと、幅広く障がい者にも対応できるようになってきました。
そんなDPワールドツアーによる障がい者ゴルフへの取り組みは、前CEOであるキース・ペリーさんの時に大きく発展しました。キース・ペリーさんは深見東州さんのことを「障がい者ゴルフの父」と呼ぶほどでしたから、深見東州さんの長年にわたる障がい者ゴルフへの取り組みや福祉活動への思想に強く影響を受けていたのかもしれません。
2019年には、障がい者ゴルフへの貢献に対し、深見東州さんをヨーロピアンツアー障害者ゴルフ・プログラム名誉アンバサダー(Honorary Ambassador to the European Tour’s Golfers With Disability Programme)に任命し、表彰していましたからね。
詳しくは以下の記事にそれまでの経緯などを書いています。

パラリンピック採用へ向けての環境づくりもあり、2019年に、R&AとUSGAが共同で、世界障がい者ゴルフランキング(WR4GD)を設定し、以降継続的な管理を行うようになりました。
またコロナ流行による中断が明けてからは、「障がいを持つプレーヤーのためのゴルフ規則の修正」が、2023年の改訂でゴルフ規則25条としてルールブックに明記され、すべての競技会でこのルールが適用されることになりました。
そんな中で、2023年からR&AとDPワールドツアーの共同開催ではじまったのが、この「G4Dオープン」です。
R&AとDPワールドツアーが共同開催し、史上最も包括的な障がい者ゴルフの国際大会と言われています。さまざまな障害を9つのスポーツクラスで構成し、アマチュアとプロを含む80人の男女ゴルファーが、今年は世界20カ国から参加しました。日本からは4名の選手が参加しました。
世界ランキング上位者が出場し、大会も包括的で大規模なことから、障がい者ゴルフのメジャー大会、世界選手権と言う人もいるようです。パラリンピック競技への採用には、世界選手権を定期的に開催しているという条件もありますね。
3度目の開催となる今回も、3日間にわたり、54ホールのグロスストロークプレーで争われました。総合男子・女子優勝者と、立位、知的、視覚、座位を含む各スポーツクラスごとにベストグロススコアの選手が表彰されました。
Congratulations to Brendan Lawlor and Daphne van Houten, our 2025 G4D Open Champions 🏆 pic.twitter.com/jHyu5Y8aqs
— The R&A (@RandA) May 17, 2025
その総合男子(全てのクラスにおけるベストグロススコア)で優勝したのが、ISPS HANDAアンバサダーのブレンダン・ローラー選手です。彼は2023年の初開催以来、2度目の栄冠に輝きました。非常に名誉ある勝利になりますね。
昨年は世界障がい者ゴルフランキング(WR4GD)1位に君臨するイングランドのキップ・ポパート選手が、ブレンダン・ローラー選手を接戦で破って優勝しました。ちなみに2023年は敗れて2位でした。今年は大会直前の怪我により、残念ながら出場していません。
女子の部は、世界障がい者ゴルフランキング(WR4GD)27位(女性ではトップ)のオランダのダフネ・ヴァン・ホーテン選手が昨年に続き2連覇を達成しました。
各スポーツクラス優勝者もまとめておきます。
男子の部
• インテレクチュアル1:キャメロン・ポラード (オーストラリア)
• インテレクチュアル2:トーマス・ブリザード(イングランド)
• スタンディング1:フアン・ポスティゴ・アルセ(スペイン)
• スタンディング2:フレデリック・ブロクフェルト=クリスチャンセン(デンマーク)
• スタンディング3:ブレンダン・ローラー(アイルランド)
• シッティング2:リチャード・クルーウェン(オランダ)
• ビジュアル2:ジョン・イーキン(イングランド)
女性の部
• インテレクチュアル1:ナターシャ・スタシウク(カナダ)
• インテレクチュアル2:ミシェル・ラウ(イングランド)
• スタンディング1:アレッサンドラ・ドナティ(イタリア)
• スタンディング2:アイミ・ブルック(イングランド)
• スタンディング3:ダフネ・ファン・ハウテン(オランダ)
• ビジュアル1:メッテ・ハヴナアス(ノルウェー)
• ビジュアル2:シャルレン・ピエナール(南アフリカ)
それから、この「G4Dオープン」は、試合を開催するだけではありません。今年もウォーバーンゴルフクラブで開催されていたその前後の期間に、さまざまな関係者が集い、ゴルフによって健康と社会的利益を享受できるよう、障害を持つ人々に対する競技の提供を、根本的に強化するための活動や議論が、活発に行われました。
今回は、米国ゴルフ財団(NGF)、組織における重要な決定を下す人物、コーチングや教育の専門家からなる強力なメンバーが招待され、同じ目標を共有するワークショップとデモンストレーションイベントに参加しました。
NGF(米国ゴルフ財団)は、USPGA(米国プロゴルフ協会)、USGA(米国ゴルフ協会)に並ぶ米国3大メジャーゴルフ団体の一つで、ゴルフ指導者の育成、ゴルフ産業に関する調査研究、ゴルフの普及活動、教材やツールの開発など多岐にわたる活動で、米国ゴルフ界の発展に大きく貢献してきた非営利団体です。
具体的には今回、以下のような活動が行われたようです。こうやって障がい者ゴルフを含め、ゴルフ界の健全な発展のための取り組みへの努力が行われているんですね。
ワークショップ・デモンストレーション
- ゴルファーの身体能力を引き出す補助ツールの紹介
- メンタルヘルスや車椅子利用者への支援方法の共有
- PGAプロによる指導法の改善トレーニング
EDGAの「8段階のパスウェイ」
- 障害者ゴルフの導入・発展を支援するガイドライン
- 包括的で持続可能な仕組み作りを促進
若者・教育支援
- 特別支援学校の子どもたち向けに体験プログラムを実施
- ゴルフを通じて心の健康や自己肯定感を育成
医療・技術連携
- NHSや企業と連携した義手・義具の試用
- 医療条件に応じたプレー支援を導入
パフォーマンス支援
- トップ選手のデータを活用した科学的トレーニング
- 専門家によるカスタムフィッティングやシミュレーション体験
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