2022年のハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバーでは、アンドリュー・ロイド・ウェーバーの『オペラ座の怪人』が上演されました。
今回は、ネット上に上がっているレビュー記事から、今回の公演におけるメディの評価、評判などについて触れてみます。前回の記事では今回の公演についての概要を書きましたので、そちらも参考にしてください。
まずは、『オペラ座の怪人』公演始まって以来の大規模な野外公演であり、しかも通常の2倍以上もある広大な水上ステージという環境の中で、どのような演出がなされたのか。また、その効果についての評価を書いたものをいくつか紹介します。
「セットと衣装は、著名なデザイナー、ガブリエラ・ティレゾヴァが手がけました。彼女は、シドニー湾の広大な環境を逆手にとり、パリ・オペラ座の豪華な内装と、地下の荒涼とした幻影の隠れ家を効果的に演出しなければならなかったのです。そして、彼女は見事に成功した。」
「オペラ・オーストラリアがお届けする「オペラ座の怪人」は、今まで見たこともないような作品です。ガブリエラ・ティレゾヴァは、セットと衣装のデザインを通して、別世界を作り出しました。パリ・オペラ座の中心をなす大階段と精巧なシャンデリア、そして豊かな色彩とファブリックが、登場人物に生命を吹き込みました。この浮世離れした世界を創り出すのは並大抵のことではなく、ニック・シュリーパーによる卓越した照明デザインと相まって、観客はまるで魔法にかけられたような感覚を味わうことができます。これは、私たちが今必要としている逃避行なのです。」
「ガブリエラ・ティレゾヴァの衣装は、コンテッサの豪華で誇張されたガウンから、バレエダンサーの宝石とゴッサマーの衣装、仮面舞踏会のきらびやかな熊や羽のついたクチュリエ、海賊のような貴婦人の群れまで、精巧で楽しいものでした。ファントムのボートが劇場のボックスの下を魔法のように滑空する場面では、観客から自然と「ウォー」という声が上がりました。」
「同様に豪華なのは衣装だった。パリの貴族の衣装だけでなく、オペラやバレエの衣装も手がけている。クリスティーヌの繊細なレースのドレス、カルロッタとウバルドの派手な衣装、ジリー夫人の妥協のない黒のドレス、そしてもちろん、ファントムの不吉でありながら勇ましいロングコートと広い帽子など、ティレゾヴァのデザインが登場人物の個性をより際立たせていた。」
「演出家のサイモン・フィリップスとデザイナーのガブリエラ・ティレゾヴァは、水上に設置された巨大な専用ステージで、鏡、ファントムの隠れ家への旅、シャンデリアといったショーの決定的瞬間を、まったく新しいレベルのスペクタクルで表現した。
「シャンデリアはそのままに、キャンドルのゆらぎがさらに驚異的な効果を生む。ティレゾヴァは、朽ち果てた豪華な金メッキのハーフプロセニアムと巨大な大階段、そして静かに滑り落ちる美しいセットピース、ニック・シュリーパーによる見事な照明で、サイモン・フィリップスの壮大な演出のために彼女が作った何百もの豪華な衣装とウィッグに完璧な環境を提供し、そのためにシモーヌ・ソーが大勢のダンサーが関わる目を引く一連のダンスシーケンスを作り出しました。そのスペクタクルは、カンパニー全員が参加する仮面舞踏会（マスカレード）のシークエンスで頂点に達した。」
「幻影の住む地底湖は、ガルニエ宮の本来の建築に存在したものである。この構造は、シドニー・ハーバーという舞台にぴったりで、ファントムの隠れ家へ行くために使われるボートは、舞台を囲む水の上に浮かんでいるような錯覚を最大限に引き出していた。」
「クライマックスには大きなシャンデリアが登場し、巧みな吊り下げシステムによって舞台の上に吊り下げられていました。シャンデリアはまた、月の反射を映し出し、浮遊する舞台を幽玄な魅力で包み込み、さまざまな光の風景を演出しました。」
「金メッキと複雑な彫刻が施されたセミプロセニアムアーチに囲まれた水上ステージ、星空へ続く壮大な階段、そしてもちろん、目の前で揺れ、きらめき、穏やかに崩壊する巨大シャンデリアで、この挑戦は十分に成功していると言える。」
などなど、演出効果に関しては、当初、心配されたような困難さを補ってあまりある演出がなされていたことが、ジャーナリストのレビューからわかりました。35年間も世界中で人気を保持してきた『オペラ座の怪人』には、新たな変化や刺激を求めるのは難しいだろうという予想に反して、名作に新たな息吹を吹き込んだと評されていました。また、過去のハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバーを見てきた人たちは、これまでの公演で最高の舞台だったと書いている人も目立ちました。
次に出演者についてですが、メインが9名、アンサンブルが36名、計45名が出演したそうです。これは、ウエストエンドやブロードウェイで上演された『オペラ座の怪人』よりも多いキャストで、オーストラリア屋内ステージの2.5倍の広さがあるステージを埋めるために必要だったそうです。
オペラ・オーストラリアの芸術監督であるリンドン・テラシーニ氏は、今回の才能豊かなキャストの発表時に、感激しながら次のように述べていました。
「これらの若いアーティストたちは、トップレベルの実力を持ち需要が多いため、今年のハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバーのために彼らを確保できたことは、本当に素晴らしいことでした。ジョシュア・ロブソンは素晴らしい才能の持ち主で、観客を圧倒してくれるでしょう。クリスティーヌ役のジョージナ・ホプソンはまさに魔法にかけられたような存在です。またラウル役のカラムは本当に夢のようなキャスティングで、これ以上嬉しいことはありません。ジョシュア・ロブソンとジョージナ・ホプソンとの相性は本当にすばらしく、カラム・フランシスはラウルを歌うために生まれてきたようなものです。
この3人の主役に加え、現在ブロードウェイでマダム・ジリー役を演じているオーストラリアの才能あるパフォーマー、マリー・ジョンソンが帰国してこの役を再演し、ナオミ・ジョーンズがカルロッタ役を担当する予定です。さらに、ピアニ役のポール・タボーン、ファーミン役のマイケル・コーミック、アンドレ役のマーティン・クルーズ、メグ・ジリー役のケルシー・ボイデンが加わり、クラシックを横断するアーティストが集結します。」
そして、実際に公演を観たジャーナリストたちのレビューから、出演者についての感想をいくつかみてみます。
「ジョシュア・ロブソンは、ファントム役を見事に演じきっている。特に重要なタイトル曲では、興味深い歌い方をする。また、強烈な存在感を放つ俳優でもあり、舞台のほとんどで顔の半分を覆われ、途中でいくつかの残虐行為を犯しても、最後のシーンでは観客の共感を得ることに成功した。
ミュージカル『ラグタイム』のジョージナ・ホプソンの演技を見た者は、彼女がこのプロダクションでクリスティーヌ・ダーエ役に起用されたことに驚かなかっただろう。彼女の澄んだ甘いソプラノボイス、完璧なディクション、そして魅力的なステージングは、この役柄に完璧なキャスティングと言えるでしょう。ホプソンの演技は、クリスティーヌにいつも以上の気迫を与え、ファントムに魅了された彼女が危険にさらされることに気づき始める最後のシーンにさらなる緊張感をもたらしている。
奇妙な髪型のラウル役のカラム・フランシスは、『北の国から来た女』の優しいボクサー、ジョー・スコットを演じたばかりで、『キンキーブーツ』のドラッグクイーンのローラ役で主演したときとは見違えるように、クリスティンを助ける役を情熱的に、見事に歌い上げ、この役の他の解釈とは全く異なる演技を披露しています。
また、歌姫カルロッタ・ジュディチェリ役のナオミ・ジョーンズは、衣装だけでなく、コロラチュラも素晴らしく、大げさな演技が印象的でした。
貴重なプリマドンナ、カルロッタを演じたナオミ・ジョンズはドラマチックで威厳があり、ブロードウェイ公演から間もないマリー・ジョンソンは、ファントムと謎の関係を持つ恐ろしいバレエ教師マダム・ジリーを演じ、頼もしい限りである。」
「ジョシュア・ロブソンは、タイトルロールに躍動的なエネルギーと伸びやかな歌声をもたらします。メロドラマが最高潮に達したとき（たとえば、セットの2つのタワークレーンの1つに吊るされた戦車で堂々と登場するとき）、彼はステントリアンであり、ファントムの揺れ動く感情のGフォースを表現することにも長けている。
ジョージナ・ホプソンはクリスティン役に理想的な役者である。彼女の色彩、コントロール、レンジは終始明白である。ラウルは颯爽としているが、カラム・フランシスは彼の無愛想さと繊細さをも捉えている。
劇場支配人のファーミンとアンドレを演じたコルミックとマーティン・クルーズは素晴らしい演技でした。ソプラノ歌手のナオミ・ジョーンズは、激情的なカルロッタを面白おかしく、素晴らしい声で演じ、ポール・タボーンはコミカルなテノール、ウバルド・ピアンギを完璧に演じています。」
「ジョシュア・ロブソンはファントム役を見事に演じている。彼の声は力強く響くが、弱さを見せる瞬間には切なさを感じさせる。舞台上では威嚇的な存在感を放ち、狂気的なエネルギーに満ちている。
ジョージナ・ホプソンのクリスティンは、愛すべき存在です。彼女の歌声は見事なまでに空気を突き抜け、主役の彼女は、若く控えめな純情少女から、より深く知り、思いやりのある歌姫へと説得力を持って変化していくのです。
カラム・フランシスは、ウエストエンドとオーストラリア公演の『キンキーブーツ』の主役として知られ、ラウルを新鮮に演じている。フランシスは、ファントムの悪意とは対照的な、生き生きとした真剣な表情を持っています。
フリミン氏役のマイケル・コーミックとアンドレ氏役のマーティン・クルーズは、まるでボードビリアンコメディのコンビのように、どちらかといえば暗いストーリーを盛り上げている。同様に、カルロッタ役のナオミ・ジョンズとウバルド役のポール・タボーンも、よりドタバタした雰囲気の中でコミカルな演技を披露しています。
マリー・ジョンソンはブロードウェイの『ファントム』から派遣され、マダム・ジリー役に重厚さと人生で培った知恵を与えてくれるが、これは間違いなくオリジナルのシドニー公演でクリスティンを演じた経験によるものです。
メグ・ジリー役のケルシー・ボイデンは、常に熱心だが、母マダム・ジリーが望んでいたような天才的な女性とはほど遠く、従順に動き回る。」
「ファントム役は、ジョシュア・ロブソンだった。比較的無名のロブソンにとって、この役はこれまでの彼のキャリアの中で最も大きな役となった。最後に彼が受けた大きな拍手は、あの有名なナンバーをいかにうまく歌いこなしたか、そしてファントムの脅威的な、そしてロマンチックな人格をいかにうまくとらえたかを示すものであった。
ファントムとラウルの恋敵であるクリスティーヌ・ダーエを演じたのは、クラシック音楽の教育を受けたソプラノ歌手、ジョージナ・ホプソンである。透明感のある音色と、それに見合うドラマチックな演技力で、彼女はまさにクリスティーヌそのものだった。
この夜の主役の一人は、間違いなくカラム・フランシスである。イギリス出身で、これまで多くの舞台で活躍してきた彼が、シドニーに拠点を移したのは朗報だ。私はカラムを見た記憶がないのだが、これからたくさん見ることができるだろう。クリスティーヌのもう一人の求婚者、ラウル役の彼は、舞台上の魅力に溢れ、シーン・スティールとして非難されそうなほどであった。素晴らしい演技だった。
シドニーのクリスティーヌはマリー・ジョンソンが演じたが、かつらと衣装で若さを取り戻し、バレエの女主人マダム・ジリーとして完璧に仕上げていた。
カルロッタ役のナオミ・ジョーンズとウバルド役のポール・タボーンは、かつてのオペラ座の主役級の役どころである。ウバルド役はコミカルなタッチも要求される。タボーンが楽しく演じています。
また、劇場の新しいオーナー、M.ファーミンとM.アンドレを演じるマイケル・コーミックとマーティン・クルーズは、強力なサポートを提供しています。批評家にもよく知られた役柄だが、説得力があり、好感が持てた。
オペラ・オーストラリアが長年にわたって得意としてきたのは、バレエ団である。この作品では、才能豊かなダンサーであり振付師でもあるシモーヌ・ソーが、女性バレリーナを起用し、夜を楽しく彩っている。
この作品には非常に多くのアンサンブルが出演していますが、彼らがどのような役を演じるにせよ、その正確さとよく練習された動きと歌は、サイモン・フィリップス監督の最高の指揮の表れでした。
私はいつもハンダオペラの見事な音響に感心しています。今年も例外ではなかった。スピーカーが見えないように工夫され、常に演者が話したり歌ったりしている近くから音が聞こえてくるようです。これは間違いなくドラマを盛り上げるものであり、サウンドデザイナーのシェリー・リーの功績です。
クレーンでセットの一部を移動させたり、楽屋を工夫したりと、照明デザイナーのニック・シュリーパーには多くのチャレンジがありました。本国オーストラリアのほか、多くの国で成功を収めているニック・シュリーパーは、その技術的なノウハウは誰もが認めるところです。
オペラといえば、華やかな音楽。オーケストラの演奏は、目には見えないが、幸いなことに、美しく設計されたサウンドで、非常に高い水準にあった。セットの下にテレビ画面が見え隠れし、指揮者のガイ・シンプソンが熱心にタクトを振っているのが見える。30年以上にわたってこの曲を演奏し、指揮をしてきたのだから、当然といえば当然なのだが。
座席に座りながら、私はオーストラリア人であることをとても誇りに思いました。デザイナー、パフォーマー、ミュージシャン、テクニカルスタッフ（130人以上）の巨大なチームによって、この作品は「ワールドクラス」ではなく、「ワールドリーディング」だと私は判断した。
この「オペラ座の怪人」は、私がこれまで経験したミュージカル劇場の中で、最も素晴らしい夜のひとつであったことは、公演終了時の観客の熱狂的な拍手からも明らかです。」
「クリスティーヌ・ダーエ役のジョージナ・ホプソンは、彼女の情熱、強さ、内なる葛藤を表現し、センセーショナルな存在感を示しています。彼女の才能は、ファントム役のジョシュア・ロブソンと完璧に組み合わされ、ファントムの苦悩を見事に表現しています。その他、クリスティーヌの幼なじみでシャニー子爵のラウルを演じたカラム・フランシス、陽気なカルロッタ・ギディチェッリを演じたナオミ・ジョンズも印象的な演技を見せた。」
「公演が終了し、出演者たちがお辞儀をするとき、最も大きな拍手が舞台スタッフに対して送られましたが、それには理由があります。この「オペラ座の怪人」の公演には、文字通り、たくさんの動く部品が使われています。クレーンでシャンデリアやパフォーマーを揺らしたり、ボートが炎の中を進んだり、鏡に映像が映し出されたり。このような舞台を支えているのは、人形遣いであり、糸を引く人であり、そして舞台全体をまとめる接着剤である男女であり、彼らはそれを驚くほどうまくこなしています。
「オペラ・オーストラリアは、史上最も有名なオペラの一つを、より良いものにしたのです。オペラ座の怪人」の素晴らしさを表現するには、十分な形容詞がありません。音楽があなたの中を動き回るように感じられるほど、あなたの感覚を圧倒し、美とファンタジーと恐怖の旅に連れて行ってくれるでしょう。
「シェリー・リーによる奇跡的なサウンドデザインは、ロイド・ウェバーの素晴らしいスコアのすべての歌詞と音を、ガイ・シンプソンが舞台下から素晴らしいオーケストラを指揮して見事に解釈し、堪能できるようにしたものです。さらに、自然も協力して、絵に描いたようなシドニーの秋の夜空を演出してくれました。
「タイトル曲の「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」と「マスカレード」は、メロディーが終わった後もずっと心に残る、このミュージカルの幽霊のような原点のような曲です。シドニー・ハーバーのハンダ・オペラのステージの下にあるオーケストラは、サウンドトラックに命を吹き込み、自然を背景にした感覚的なワンダーランドを作り上げるのです。
「歌声は崇高で、演技は魅力的で、セットデザインは壮大で、オーケストラは傑出している。ジョシュア・ロブソンは、若々しくエネルギッシュなファントムを、威厳のある声で完璧に演じています。ジョージナ・ホプソンは、クリスティンの歌声が驚くほど豊かで、彼女が表現する感情も素晴らしい。カラム・フランシスの声は、ラウールとファントムを戦わせ、クリスティーヌへの情熱を表現しており、聴く者を楽しませてくれる。
「すべてのキャストの声が素晴らしいだけでなく、サウンドシステムも驚異的だった。ソロの声の透明度と質は驚異的だった。
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