G・ヴェルディ作曲「リゴレット」の舞台設定を、日本文化に置き換えた「リゴレット in ジャパン」が上演されました。 深見東州さんのアイディアで、リゴレットは公爵に仕える宮廷道化師から、武家に仕える狂言師〈詈業劣徒(リゴレット)〉という設定におきかえられ、深見東州さんが演じました。
序曲
劇中に何度も登場する「呪い」のテーマに導かれた、悲劇を暗示した序曲。幼き頃のジルダと亡くなったジルダの母。鳥かごの鳥は、ジルダを象徴します。
この救いようのない結末をなんとか打破できないものか、深見東州さんが日本文化で咀嚼して、見事「滅びの美学」へと昇華させた、リゴレット史に残る演出となります。
第1幕
マントヴァ公爵の宮廷では、舞踏会が行われています。そこには、獅子舞や女性の胸をデフォルメしたおみこしまで登場します。深見東州さんと演出家のコラボレーションによる新演出です。
マントヴァ公爵が、生活信条である愛の自由を謳歌する「あれかこれか」を歌います。
マルッロの「リゴレットが情婦を囲っている」というニュースに、驚くボルサと廷臣たち。
夫の目前でチェプラーノ伯爵夫人を口説くマントヴァ。チェプラーノ伯爵夫人
深見東州さんのアイディアで、リゴレットは公爵に仕える宮廷道化師から、武家に仕える狂言師という設定に。
プロの能楽師である深見東州さんの完璧な所作、そして完璧な演技、新しいリゴレット像が生み出されました。
「リゴレット」のテーマである“呪い”を歌う悶諦牢寝(モンテローネ)伯爵。
オペラ界の重鎮、栗林義信氏の圧倒的な存在感で演じられました。
モンテローネの呪い……。これ以降、リゴレットの脳裏から離れなくなります。
殺し屋スパラフチーレ(バス)とリゴレット(バリトン)との二重唱。
スパラフチーレはリゴレットを呼び止め、自分は殺し屋と名乗ります。
リゴレットのモノローグ。
「彼は剣で、俺は舌で人を殺める同類だ」(2人は同じ)
リゴレットが自分の身のみじめさを嘆き、廷臣たちを憎む劇的なモノローグ。
深見東州さんは、完璧なヴェルディバリトンで歌い上げます。
リゴレットとジルダの二重唱「娘よ、おまえは私のもの」
リゴレットにとって、唯一の慰めは娘ジルダの成長。情愛に満ちた美しい二重唱です。
リゴレットは、乳母のジョヴァンナに、娘の純潔を守ってくれと頼みます。しかし、そこへ学生に変装したマントヴァ公爵が潜り込みます。
二重唱の途中、孤独で醜い自分を愛してくれたと、亡き妻を偲んで歌う時、舞台上には幼い頃のジルダの姿が浮かびます。その忘れ形見であるジルダは、まさにリゴレットの命であり、全ての生き甲斐なのでした。
神社(原作では教会)で出会った大学生が、実は公爵とは知らぬジルダは、彼に恋心を抱き、愛の二重唱「あなたは心の太陽だ」を歌います。
ジルダが独り、バルコニーで歌う「慕わしき人の名は」。
華麗なコロラトゥーラの部分では、美しさにため息が出るほどでした。
ジルダをリゴレットの情婦と勘違いした廷臣たちは、復讐のためにリゴレットを騙し、ジルダをさらいます。
ジルダをさらうのは、なんと忍者たち。これも深見東州さんのアイディアで実現します。
だまされたリゴレットの絶望!!!圧倒的な迫力のうちに、第1幕が終わります。
第2幕
「ほほにかかる涙が……」ジルダが誘拐されたと知り、彼女の身を心配して歌うこの歌は、公爵が真の愛情を持っているとしか思えない一面を垣間見せます。
左から、ボルサ、チェプラーノ、マルッロ。ジルダを誘拐したのが、自分の廷臣たちと知り、いつもの好色漢に戻るマントヴァ。
「ラ、ラ、ラ」軽やかではあるが、弦が悲痛に響く前奏にのって、完璧な狂言師の所作でリゴレットが現れます。そして、ジルダの行方を知ろうと、道化を演じて様子を窺います。
リゴレットは「俺の娘だ!! 娘を返せ」と叫び、名アリア「悪魔め、鬼め」を歌います。
リゴレットのアリア「悪魔め、鬼め」。
娘を返せと怒り、呪い、最後は廷臣たちに懇願して歌います。6キロ以上の衣裳をつけ、最後は正座して歌う歌い方は、リゴレット史上初めてです。頭についた風車が揺れ涙を誘います。
奥の部屋より走り出てきたジルダは、すでに、マントヴァの慰み者になったあとでした。
リゴレットは、廷臣たちの退出を懇願します。
2人きりになった父娘。ジルダは公爵との出会いと愛情をリゴレットに打ち明ける「いつも日曜に教会(神社)で」を歌います。
牢獄に連行されるモンテローネが、「公爵には呪いも届かない。悪運の強い奴」と罵って去ります。
「いや、復讐は私がしよう」と誓い、「やめて」と懇願するジルダを、憤りながら振り払うリゴレット。
第2幕終幕。
深見東州さんは、この幕切れで、能の決意を表す型を決め、一枚の絵のような、素晴らしい幕切れとなります。
第3幕
テノールが歌う最も有名な曲のひとつ「女心の歌」。サングラスをしたマントヴァが歌います。
スパラフチーレの宿を訪れたマントヴァは、その妹マッダレーナまで口説こうとします。
リゴレットはジルダに公爵の実像を見せて、諦めさせようとさせます。
この後、リゴレット、ジルダ、マントヴァ、マッダレーナの4人による、それぞれの心情を歌った「リゴレットの四重唱」が歌われます。重唱の中の最高傑作と言われている曲です。
スパラフチーレにマントヴァ殺しを依頼するリゴレット。
スパラフチーレは、マントヴァの隙を窺います。
マントヴァにほれたマッダレーナは、マントヴァを殺さないでと兄に願う。スパラフチーレは、「真夜中までに宿泊客が来たら身代わりにしよう」と決めます。
父の命令に背き、ジルダは公爵の身を心配して舞い戻ります。そこで、公爵殺しの話を聞き、自らが身代わりになることを決心します。
ジルダ、マントヴァ、マッダレーナの3人による、緊迫した三重唱が歌われます。
嵐のシーン。このあと、ジルダは2人に殺されます。
スパラフチーレから、公爵の死体の入った袋を受け取ったリゴレット。重苦しい独白のあと、復讐の喜びに震えます。
しかし、あろうことか、その時マントヴァの「女心の歌」を歌う声が……
愕然としたリゴレットが、袋を開けると、そこには命より大切な娘ジルダが。
ジルダは、愛する公爵に対する許しを請い、「天国のお母様のそばで祈ります」と歌います。
救いようのない結末も、日本文化で咀嚼すると必ず救いがあるはず。深見東州さんの情熱は、全く新しい結末を生みます。
鳥かごから抜け出して、自由になった小鳥のように。まるで、月の世界に帰っていくような、幻想的なラストシーンが生まれたのでした。
「あの呪いだー」。悲痛な叫びで幕が下りました。
終演後、出演者、スタッフとともに。
オペラ「リゴレット in ジャパン」 G・ヴェルディ作曲「リゴレット」全三幕字幕付き原語上演
出演
- 詈業劣徒(リゴレット)
- 深見東州
- 慈流多(ジルダ)
- 大貫裕子
- 漫兎魔(マントヴァ公爵)
- 大間知覚
- 須腹付血礼(スパラフチーナ)
- 劉月明
- 魔多麗菜(マッダレーナ)
- イリアナ・ボドナラス
- 悶諦牢寝(モンテローネ伯爵)
- 栗林義信
- 知恵腐乱脳(チェプラーノ伯爵)
- 斉木健詞
- チェプラーノ伯爵夫人
- 小林菜美
- 丸老(マルッロ)
- 松尾健市
- 棒折左(ボルサ・マッテーオ)
- 田代誠
- 助姥汝(ジョヴァンナ)
- 西川裕子
- 小姓
- 財津廣根
- 役人
- 今井俊輔
- ジルダ子役(多摩ファミリーシンガーズ)
- 渡辺桃可
- 指揮
- 山上純司
- 管弦楽
- 東京ニューフィルハーモニク管弦楽団
- 合唱
- リゴレット in ジャパン合唱団