新国立劇場オペラパレスで上演されたオペラ「聖徳太子」は、大絶賛でした。
いつまでもカーテンコールが鳴り止まず、それだけ本当に感動的なオペラでした。
聴衆を世界観に引き込む完璧なパフォーマンスと演出だったとおもいます。
出演者の熱唱と演技には、本当に魅了されました。8人のソリストたちは、それぞれの役柄を完璧に演じていました。表情がとても細やかで、炊屋姫のしたたかな表情や、蘇我馬子の野心と手段を選ばない非情な表情など、特に印象に残りましたね。
聖徳太子の妃、刀自古を演じた大貫裕子の、父と夫の間で葛藤し、苦しんで死を選ぶシーンや、タイトルロールを演じた深見東州さんが、刀自古を失った絶望から立ち直るシーンも、すごく胸を打ちました。
馬子に誅殺された泊瀬部大王が、呪って出てくるシーンにはゾクっとしましたけどね。
また、小野妹子や秦河勝を演じた2人のソリストは、爽やかで颯爽とした演技で、悲劇的なストーリーの中で隠し味的な良い味を出していましたね。ストーリーが一本調子にならずに、広がりができたと思います。
そして聖徳太子の相談役のような僧慧慈は、落ち着いた重厚な雰囲気で、ストーリーに深みを与えていたように思います。
それぞれのソリストの熱演だけではありません。今回、どのようにバレエのダンサーたちが登場するのか興味ありましたけど、それが素晴らしい演出でした。
初っ端での戦のシーンでは、華麗なダンスで戦の残酷さを重くなりすぎず上手に演出しました。これはイケると思いましたね。
その後も炊屋姫が即位するときには、宮廷の優雅な舞をモチーフにしたダンスを披露し、泊瀬部大王の暗殺のシーンでは、迫り来る恐怖をコンテンポラリーダンスで表現しました。
また、蘇我馬子が泊瀬部大王の亡霊に怯えるシーンでは、亡者たちの恨みをダンスで表現し、ラストのクライマックスでは、希望に溢れるこれからの日本を演出するような踊りを見せてくれましたね。
合唱団のメンバーたちも、ダンサーに混じって、しっかりとパフォーマンスを引き立てていました。
そして、クライマックスに向かうワンシーンでは、観音に扮した能の演出が登場し、非常に重要な意味を持っていました。厳かで神々しい能の演出をここで入れるてくるとは、非常に計算された素晴らしい演出でしたね。
観音様の役ですが、特にセリフはありません。しかし能の所作にもとずく最小限の動きでもって、厩戸皇子の祈りが通じ、未来が拓けてゆく予感を感じさせました。
これだけのオペラを仕上げるためには、どれほどの準備が必要だったのでしょうか。ソリスト、バレエダンサー、能楽師が見事に溶け合い、相乗効果を発揮する演出は、見事としか言いようがありません。長い時間をかけて準備し、練習を重ねてきたのでしょうね。
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